●くらま辻井とは 株式会社くらま辻井は1917年に京都市左京区鞍馬で創業し、100年以上続く老舗です。現在はつくだ煮・そうざいの製造および販売を行っていますが、古くは炭問屋を営んでいました。しかし、時代とともに炭の需要が減り、商いを変えなければならなくなりました。交通網が少なく、冬は深い雪で外に出られない鞍馬において、家庭の保存食として長く口にされてきた木の芽、つまり山椒を使ったつくだ煮(木の芽煮)を売り出して評判となり、やがて本業となりました。今でもこだわりの素材を朝早くから昼過ぎまで、釜のそばを離れずにじっくりと炊き上げています。素材を丹念に、先人より受け継いだ手法そのままに作りあげており、数百年昔から現在にまで受け継がれた伝統の味を守り続けています。 ●食文化の継承とフードロスへの取組み 鞍馬の郷土料理である木の芽炊きのルーツは平安時代まで遡ります。かつて鞍馬寺で修行を積んでいた牛若丸は、あけびの蔓(つる)と山椒を漬けこんだ木の芽漬けを常食にしていたと言われ、これが今の「木の芽煮きのめだき」のルーツとされています。現在では、昆布、山椒の葉・実を炊きこんだものが、鞍馬の銘産「木の芽煮」となっています。かつての鞍馬周辺では木の芽煮を代表として京つくだ煮やそうざいを販売する店舗が並び活気がありましたが、洋食文化の広がりや高齢化と共に年々衰退しており、現在製造しているのはわずか数社となりました。先人より受け継いできた木の芽煮を中心としたつくだ煮・そうざいを継承するため、今も受け継いだ手法で丁寧に作っています。フードロスへの取組みも進めており、木の芽煮を作った際に出てしまう煮汁は元々廃棄されていましたが、摸索を経て現在はうなぎやはもの山椒煮の煮汁として活用しています。また、煮る際に形が崩れてしまい売り物にならなくなってしまう商品や具材が出てしまいますが、視点を変えることで新商品として使えないか開発を進めており、伝統を守りながら進化を続けています。